日記で読む日本史 全20巻


倉本一宏 監修


四六判・上製・紙カバー装・帯付・平均250頁
各巻予価税込3,080円(本体2,800円+税)

ひとはなぜ日記を書き、他人の日記を読むのか? 平安官人の古記録や「紫式部日記」などから、「昭和天皇実録」に至るまで従来の学問的な枠組や時代に捉われることなく、日記のもつ多面的な魅力を解き明かし、数多の日記が綴ってきた日本文化の深層に迫る。

3か月毎各回2冊配本予定 *は既刊、◎は次回配本

1 日本人にとって日記とは何か
 倉本一宏 編  税込3,080円(本体2,800円+税)

2 平安貴族社会と具注暦
 山下克明 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

3 宇多天皇の日記を読む
    天皇自身が記した皇位継承と政争
 古藤真平 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

4 「ためし」から読む更級日記
    漢文日記・土佐日記・蜻蛉日記からの展開
 石川久美子 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

5 日記から読む摂関政治
 古瀬奈津子・東海林亜矢子 著  税込3,520円(本体3,200円+税)

6 紫式部日記を読み解く 源氏物語の作者が見た宮廷社会
 池田節子 著  品 切

7 平安宮廷の日記の利用法 『醍醐天皇御記』をめぐって
 堀井佳代子 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

8 皇位継承の記録と文学 『栄花物語』の謎を考える
 中村康夫 著  税込3,080円(本体2,800円+税)

9 平安期日記文学総説 一人称の成立と展開
 古橋信孝 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

10 王朝貴族の葬送儀礼と仏事
 上野勝之 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

11 平安時代の国司の赴任 『時範記』をよむ
 森 公章 著  品 切

12 物語がつくった驕れる平家 貴族日記にみる平家の実像
 曽我良成 著  税込3,080円(本体2,800円+税)

13 日記に魅入られた人々 王朝貴族と中世公家
 松薗 斉 著   税込3,080円(本体2,800円+税)

14 国宝『明月記』と藤原定家の世界
 藤本孝一 著  税込3,190円(本体2,900円+税)

 15 日記の史料学 史料として読む面白さ 尾上陽介 著

16 徳川日本のナショナル・ライブラリー
 松田泰代 著   税込3,850円(本体3,500円+税)

17 琉球王国那覇役人の日記 福地家日記史料群
 下郡 剛 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

18 クララ・ホイットニーが綴った明治の日々
 佐野真由子 著  税込3,630円(本体3,300円+税)

19 「日記」と「随筆」 ジャンル概念の日本史
 鈴木貞美 著  税込3,300円(本体3,000円+税)

20 昭和天皇と終戦 鈴木多聞 著

 

●●監修者のことば●●
国際日本文化研究センター教授 倉本一宏

 天皇以下の皇族、公卿以下の官人をはじめ、武家、僧侶、神官、学者、文人から庶民に至るまで、各層の人々によって日記を記録するというのは、世界的に見ても日本独特の特異な文化である。
 また、何故に日本では古い時代の日記が今日まで残されてきたかという問題も、先祖の日記を保存し続けた「家」の存在と、記録=文化=権力であるという、日本文化や日本国家の根幹に通じる問題に関わっている。もちろん、王朝が交替することなく、王権と朝廷、それを構成する天皇家と貴族の家が一つの都城としての京都に存在し続けたことも、日記が残った大きな要因となった。
 この叢書は、古代から中世・近世・近代・現代にいたる第一線の研究者が、すべて書きおろした二〇冊の集成である。内容も日本史や日本文学、心理学にまで及び、地域も京都を中心に、関東から琉球まで視野に入れている。
 まさに日記研究の最前線にして最高の精華を一般にわかりやすく書き起こした、一大金字塔となるであろう。

●●「日記で読む日本史」シリーズ刊行に寄せて●●
                        お肩書はシリーズ刊行開始時のもの

日記の面白さ
東京大学名誉教授 五味文彦

 まめな人間の日記は実に面白い。どうしてこんな事まで書いたのか、と思う事がしばしばだ。公務で書いた日記は面白くない、というが、その中に時にとんでもない事実が見えてくることがある。それがなくとも、書いている人の心情に立ち入って読めば、面白いものが見えてくる。
 いうまでもなく日記は歴史を考える上で欠かすことのできない史料。その時々の時間の流れに沿って記されているだけに、歴史的変遷がうかがえ、書かれた時代のものの見方が浮かび上がってくる。それを知ることのできるのが、日記の大きな楽しみである。
 この叢書、そうした面白さや楽しみだけでなく、日記を解明する研究者自身の思いが伝わってくるのも面白い。写本の形で伝えられている日記も多く、それをどう復元していくのかも興味深い。日記特有の個性にどう立ち向かうのか、記主の個性ばかりか研究者の個性も見えてくる。楽しみ倍増だ。さあ、読んでみよう。

脱「日記文学」研究
国文学研究資料館長 今西祐一郎

 日記とは、実用的な記録行為、そして記録された内容を意味する語である。歴史学者による公家日記の研究は、一見、実用本位の無味乾燥な変体漢文を対象として、字面の背後に潜む生々しい歴史の鼓動を見出すところに醍醐味がある。
 他方、国文学では、女性の仮名日記が近代人の感情移入を可能にする柔らかな大和言葉で書かれたせいであろうか、その研究は「日記文学」研究が主流となり、日記の実用面よりも情緒面の探求に重きが置かれていた。国文学の徒ではあるが、私は、かねてより「日記文学」研究において、もう少し女流日記の実用・実利面に光を当てるべきではないかという思いを抱いてきた。このたび歴史学者倉本一宏氏を中心とする第一線の日記研究者による『日記で読む日本史』シリーズは、女流日記を「文学」の軛から解放して、私の渇を癒やしてくれるに違いない。

日本文化をとらえなおす
国際日本文化研究センター教授 井上章一

 日記を学校教育の場で書かせる国は、あまりない。日本と、日帝統治時代に日本的な教育がほどこされた韓国ぐらいしか、やっていないのではないか。その意味で、学校が生徒の日記を点検する指導は、日本文化の賜だと、みなしうる。
 歴史をふりかえるさいの記録となる日記も、日本ではそうとう古いものから保存されてきた。のみならず、たいへんな数になる日記が、今につたえられている。その度合いでは、世界的にもぬきんでていよう。
 日記という形に仮託された文芸も、一〇世紀から書かれつづけてきた。近代以後の作家による日記形式の作品も、ひろく読まれている。さまざまな形で、日記をそだててきた日本文化を、このシリーズでとらえなおしたい。

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