京大人文研東方学叢書 
 第二期 全10巻

四六判・上製・紙カバー装・帯付・平均250頁
各巻予価税込3,300円(本体3,000円+税)

京都学派の伝統がひらく 深淵な東洋学の世界

京都大学人文科学研究所東方部は、東方学、とりわけ中国学研究に長い歴史と伝統を有し、世界に冠たる研究所として国内外に知られている。約三十名にのぼる所員は、東アジアの歴史、文学、思想に関して多くの業績を出している。その研究成果を一般にわかりやすく還元することを目して、このたび「京大人文研東方学叢書」をここに刊行する。

* タイトル・内容・配本順は一部変更になる場合がございます。

11 五爪龍と「日本国王」 漂流民と乾隆帝
 岩井茂樹 著  
12 愛と欲望のオルド
         オバサマたちのモンゴル帝国

 宮 紀子 著
13 イスラームの東・中華の西
           七〜八世紀の中央アジアを巡って

 稲葉 穣 著  税込3,520円(本体3,200円+税)
14 商品が動かす中国近代
           茶・アヘン・米・大豆・羊毛

 村上 衛 著  
15 契丹(遼)の歴史と考古学研究
           遊牧王朝の足跡を追って

 古松崇志 著
16 漢藏諸語の類型論 豊饒な言語の森を行く
 池田 巧 著 
17 イスラーム新思想の東伝
           19〜20世紀中国ムスリムの知の展開

 中西竜也 著
18 霊魂のゆくえをさぐる 中国古代・中世の墓と神座  
 向井佑介 著
19 皇帝と寺院 玄奘の帰国と中国仏教の新たな展開
 倉本尚徳 著

20 科学伝来 イエズス会宇宙論と東アジア近世
 平岡隆二 著

 

●「京大人文研東方学叢書 第二期」刊行に寄せて●

東方学の真面目
大阪市立大学名誉教授 三浦國雄

 もともと京大人文研には、研究所としてはやや異例のことながら、知を研究所や大学内に秘めておかず、広く学外の人々と共有しようとする志向が強かった。そこには学問を我共に楽しもうとする一面があって、いわゆる啓蒙主義というのとは少し異なっている。ただ、人文研のうち東方部はその点、我は我が道を行くで、むしろ漢学を中心とする東方学の長い伝統に敬意を払いつつ、それを高めることに主力が注がれていたように思う。そういう眼で今回の企画を拝見すると少なからず驚かされる。なんと所員打ち揃っての出陣ではないか。一期二期総勢二十人の壮観、しかもテーマは古代から近現代まで豊富多彩、その新鮮なラインナップには食指がうごく。わが国東洋学の衰退が嘆かれて久しいが、ここではしっかりとその伝統が守り抜かれている。


幅広さ、豊かさ、大胆さを兼備
名古屋大学名誉教授  森 正夫

 京都大学人文科学研究所東方学研究部の活動は、創設以来九十年のどの時点においても伝統の確かさを発揮するのみならず、常に新鮮な輝きを放って来た。一九八〇年、当該研究部が、早くも外国人研究員制度を導入し、当時の中国の歴史家の第一人者たちを相継いで招いたことにも示されるように、ベテランから若手に及ぶ国内外のさまざまな研究者との率直にして自由な学術交流を絶え間なく実施し、研究水準のあくなき練磨を図るとともに、その成果を積極的な出版事業や最近の高校生のための夏季セミナーなどを仲立ちとして市民社会と広く共有してきた。これらの特徴が日々のたゆみない、着実な研究努力の根底にあるからこそ、第二期全十巻のテーマも、アジアの各地域と文化の各領域に及び、幅広さと豊かさに加え、大胆さを兼ね備えているのである。東方学叢書第二期の伸びやかな展開を心から期待する所以である。



越境しあう知の空間
朝日新聞編集委員 吉岡桂子

 フェイクニュースという言葉を聞かぬ日はない。朝日新聞の紙面に初めて登場したのは二〇一六年暮れのこと。米国大統領選でトランプ氏の勝利が決まった直後だ。実のところ「歴史」はかねて、真偽がぶつかりあう主戦場だった。時の権力者が書き換えるだけではない。社会も時代とともに読み替え、新陳代謝を繰り返す。
 その歴史は「フェイク」か。新たな視点 や解釈なのか。
 積み重ねられた研究から探ろう。「京大人文研東方学叢書」は、中国やアジアを世界史の舞台に置いて、日本史を合わせ鏡にしながら読み解いていく。時に「フェイク」をうんだ相互作用まであぶり出す。歴史と現在、地理と時間、思想と科学、生と死――。一般読者を意識して書かれたことで、背景や今とのつながりを大づかみに理解できるよう、領域もより越境しあって知の空間を広げている。
 疑問のあるところに学問がある。何かを知るともっと知りたくなる。そんな気持ちにさせるシリーズだ。


「京大人文研東方学叢書 第一期」全巻紹介ページ

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