京大人文研東方学叢書
京都学派の伝統がひらく 深淵な東洋学の世界
* タイトル・内容・配本順は一部変更になる場合がございます。
11 五爪龍と「日本国王」 漂流民と乾隆帝 平岡隆二 著
東方学の真面目 大阪市立大学名誉教授 三浦國雄 もともと京大人文研には、研究所としてはやや異例のことながら、知を研究所や大学内に秘めておかず、広く学外の人々と共有しようとする志向が強かった。そこには学問を我共に楽しもうとする一面があって、いわゆる啓蒙主義というのとは少し異なっている。ただ、人文研のうち東方部はその点、我は我が道を行くで、むしろ漢学を中心とする東方学の長い伝統に敬意を払いつつ、それを高めることに主力が注がれていたように思う。そういう眼で今回の企画を拝見すると少なからず驚かされる。なんと所員打ち揃っての出陣ではないか。一期二期総勢二十人の壮観、しかもテーマは古代から近現代まで豊富多彩、その新鮮なラインナップには食指がうごく。わが国東洋学の衰退が嘆かれて久しいが、ここではしっかりとその伝統が守り抜かれている。 名古屋大学名誉教授 森 正夫 京都大学人文科学研究所東方学研究部の活動は、創設以来九十年のどの時点においても伝統の確かさを発揮するのみならず、常に新鮮な輝きを放って来た。一九八〇年、当該研究部が、早くも外国人研究員制度を導入し、当時の中国の歴史家の第一人者たちを相継いで招いたことにも示されるように、ベテランから若手に及ぶ国内外のさまざまな研究者との率直にして自由な学術交流を絶え間なく実施し、研究水準のあくなき練磨を図るとともに、その成果を積極的な出版事業や最近の高校生のための夏季セミナーなどを仲立ちとして市民社会と広く共有してきた。これらの特徴が日々のたゆみない、着実な研究努力の根底にあるからこそ、第二期全十巻のテーマも、アジアの各地域と文化の各領域に及び、幅広さと豊かさに加え、大胆さを兼ね備えているのである。東方学叢書第二期の伸びやかな展開を心から期待する所以である。 朝日新聞編集委員 吉岡桂子 フェイクニュースという言葉を聞かぬ日はない。朝日新聞の紙面に初めて登場したのは二〇一六年暮れのこと。米国大統領選でトランプ氏の勝利が決まった直後だ。実のところ「歴史」はかねて、真偽がぶつかりあう主戦場だった。時の権力者が書き換えるだけではない。社会も時代とともに読み替え、新陳代謝を繰り返す。 |